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無期懲役刑と未決勾留日数について
 無期刑の言渡しをする場合でも、未決勾留日数の一部または全部を刑に算入することができるとされており、実際にも、多くの裁判例において未決勾留日数が無期懲役刑に算入されているが、無期刑は満期が来ることのない終生の刑であるため、その性質上、仮釈放を許すことが可能となるまでの最低期間からは引かれず、算入された未決勾留日数は恩赦などで有期刑に減刑された場合にしか意味を持たないものと解されている。
 もっとも、未決勾留が長期に及んだ場合、仮釈放の検討の際に多少の考慮が払われることもありうるため、全く完全に意味がないというわけではないが、仮釈放が可能となるまでの最低期間から引かれることはなく、 矯正統計年報に記載されている無期刑仮釈放者の平均在所期間においても、未決勾留の期間は含まれておらず、刑確定後の在所期間によっている。福岡高判昭52.12.6も参照。


第129回国会 法務委員会(1994年3月25日)会議録より

○則定政府委員
 無期懲役刑を言い渡す場合に未決勾留日数の算入を行うことができるかどうか、 未決勾留日数の算入を言い渡すことができるかどうかという問題でございます。
 この点につきましては、結論的にはできると考えておるわけでございます。刑法二十一条のいわゆる裁量的な未決勾留日数の算入につきましては、今御指摘の判例もございますし、また上訴申し立て後のいわゆる法定の未決勾留日数の算入につきましても、無期懲役刑でありましても本刑に通算されるというふうに解されると考えております。
 ただ、無期懲役刑に処された者の未決勾留日数は、仮出獄の要件とされております十年には算入されないと従来から解されておるわけでございまして、これは今言及されましたように、無期懲役が終生にわたる懲役刑でございまして、定まった刑期がない。したがいまして、事柄の性質上、これに未決勾留日数を算入するということは不可能であるというふうに解されておるわけでございます。
 それではどうして無期懲役刑に今申しましたような未決勾留日数を算入するという、判決でも言い渡しをするのかということになりますと、これは例えば、恩赦によりまして無期懲役刑から有期懲役刑に減刑されました場合、この場合には未決勾留日数が通算されることになりますので、判決でそういう言い渡しをすることも意味があるというふうに解しておるわけでございます。

第128回国会 法務委員会(1993年10月27日)会議録より

○小森委員
 それからもう一点、これも以前議論になったことでありますが、未決勾留の問題でございます。
 未決勾留の後に刑が確定をし、しかもそのまま未決勾留が相当長期にわたっておるというケースの方もおられると思いますが、未決勾留の後に刑が確定をし無期懲役刑に服役することになった。従来から議論として、無期懲役というのは簡単に言うと無限大の刑だから、そこから仮に未決勾留を引くとしても、幾ら引いても無限大から何ぼ引いたって無限大だ、こういう考え方があるようでございますが、実は現在の法務事務次官根來さんの方から、この人が刑事局長の時代にこの点は私が質問したことでありますが、私がこれから言うことが正確塗言葉であるかどうかは議事録に照らさなければなりませんけれども、大体の趣旨は、この仮出獄を決定する場合に、未決勾留長期にわたる方に対しては、その未決勾留の期間も考慮の中の一つの要件である、こういう意味のことがございました。私は、それはそれでそのときには納得をしたのであります。
 ただ、今もやもやしておるのは、無期懲役刑の人が十年も十二年も十三年も未決勾留であった場合に、それは相当考慮に入れなければならないのではないかと思いますけれども、それは今私の議論の対象ではございません。要は、その根來さんの答弁というものを今もそういうふうに法務省とすれば認識をされておるかどうか、この点をただしておきたいと思います。

○杉原政府委員
 お答えいたします。  委員御質問の点につきましては、既にこれまで国会の場で答弁申し上げているとおりでございまして、仮出獄の決定は地方更生保護委員会の判断によってなされるわけでありますけれども、この際、未決勾留通算日数につきましては、無期刑の場合は刑期に算入されないというのが法務省の見解であります。
 しかしながら、実際の仮出獄の審理に際しましては、その点も考慮すべき多数の事項の一つとして、仮出獄の審理の際に考慮の対象になると考えておりまして、これまで御答弁申し上げたとおりでございます。

第123回国会 法務委員会(1992年5月10日)会議録より

○小森委員
 さて、時間が大分なくなりました。
 先般、石川君の仮釈の問題について、我が党の谷村委員の方からるるお尋ねをいたしました。その際に、以前、どなたがお答えになったか私も覚えていないけれども、私の質問に対して、未決勾留の期間というものは仮釈を決める場合の考慮事項の中身の一つだ、こういう意味のことが答えられております。考慮事項ということになると、例えばこれまで仮釈になった人に対してそんなことが数量的にわかるような形で考慮事項として処理されたものがあるのでしょうか。

○飛田政府委員
 突然のお尋ねなものですから調べてまいりませんでしたが、恐らくは数量的には処理されたというようなことはないと思います。

○小森委員
 では、何のために裁判所は未決勾留の期間を算入するといって無期へ、無限大のものへわずかな数字をつけるのですかな。その点もちょっと答えてみてください。

○島田最高裁判所長官代理者
 無期懲役刑の場合でも、一般恩赦がございますと減刑されまして無期から有期刑に変更されることがございます。その場合、有期刑に変更された場合にはこの未決勾留の算入というのが意味を持ってまいりますので、その場合のこともおもんぱかって未決の算入をいたしておるということでございます。

第123回国会 法務委員会(1992年4月7日)会議録より

○深田肇君
 きょうは特別にお許しをいただきまして、私は埼玉県からの選出でございますので、埼玉県の方でただいま千葉刑務所に服役中の石川一雄さんの仮出獄要請について少しお話し申し上げながら、法務大臣を初めとして法務省の関係当局の方々から現状についてのお話を少し伺いまして、これからのことについてお願いをいたしてみたいというふうに思います。
 与えられている時間が大変短うございますから、むしろ次々とお話を進めさせてもらいたいのでありますが、このことに関心を持ちまして、そしていろんな方々とお話をする中で、ある書物を読んだのでありますけれども、こういうことを外国の人権の専門委員の方々が発言されていることを印刷物で読みました。こういうふうに言っておられるのですね。「日本は古い伝統との調和もあるし、人権面では発展途上と思う」という短い発言でありますけれども、こういうことを外国の人権専門委員が言われていることを大変鋭い指摘だなあと思いながら、日本にはすばらしい憲法があるわけでありますから、ぜひひとつ人権問題の観点も含めてこの問題は一日も早く解決の道に進むことを期待しているわけであります。
 時間がありませんから前段は省略しますが、いわゆる未決勾留日数というのを私たちはよく聞くのでありますが、これについての通算を我々の立場から言いますと、十一年八カ月ある、大変これは長いというふうに思うのです。これを通算をいただきますと、刑の確定どこれの通算ということになりますと大変長い時間になると思いますが、そういう形の中で仮出獄を申請してもらうための判断の材料として、大変長い十一年八カ月と言われる未決勾留日数の通算というものはお考えいただけるというふうに私どもは理解しておるのですが、いかがなものでしょうか。

○政府委員(飛田清弘君)
 未決勾留の通算という言葉は非常に微妙な問題を含んでおりまして、通常、未決勾留の通算と申しますと、例えば懲役十年なら十年というその刑に通算するということで使っておりますから、そういう意味で申しますと、無期懲役を受けて服役している人には、無期懲役の執行には未決勾留の通算というのはできないわけでございます。
 今おっしゃる御趣旨は、未決が長いから、だから仮出獄の申請をするに当たってもそれを考慮してもいいではないか、こういうふうな御趣旨で御質問なさっているのだとすれば、それは未決勾留が長かったということは、いろいろな条件を考慮して仮出獄を申請するかどうか決めますけれども、そのいろいろな条件の中の一つのものとしてそれなりに考慮されることであろう、そういうふうに考えているわけでございます。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/123/0080/12305200080012a.html
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/123/1080/12304071080005c.html
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/128/0080/12810270080001a.html
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/129/0080/12903250080001c.html

弘文堂「条解刑法 第2版」
(2)無期懲役
無期懲役とは、終身の懲役を意味し、刑期を定めないという絶対的不定刑期を意味するものではない。ただし、(現行法は無期刑にも仮釈放の余地を認めているので)10年を過ぎれば仮釈放されうるから(刑28)、(現行の無期懲役は)絶対的な終身刑をも意味しない。無期懲役刑も憲法に違反しない(最大判昭24-12-21集3-12-2048、最決昭31-12-25集10-12-1711)。

刑法28条(仮釈放)
(1)本条の趣旨
本条は、仮釈放の要件を定める。仮釈放とは、懲役・禁錮の執行を受けている者に改悛の状があるとき、刑期満了前における一定の時期に条件付きで釈放する制度である。仮釈放は、できるだけ無用の拘禁を避けるとともに受刑者に将来の希望を与えてその改善を促し、併せて刑期満了後における社会復帰を容易にさせる刑事政策的目的に出たものであり、主として受刑者の改善更生を目的とした刑の執行の一形態であると解されている。仮釈放は、刑の執行終了でも免除でもない(最判昭24・12・20裁判集15-588)。

(3)改悛の状があるとき
「改悛の状があるとき」については、仮釈放、仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則32条が、より具体的に、「仮釈放は、次に掲げる事由を総合的に判断し、保護観察に付することが本人の改善更生のために相当であると認められるときに許すものとする。(1)悔悟の情が認められること。(2)更生の意欲が認められること。(3)再犯のおそれがないと認められること。(4)社会の感情が仮釈放を是認すると認められること」と規定している。

(4)有期刑
仮釈放許可の条件として、一定期間の刑の執行を終了していることが規定されている。有期刑の場合は、刑期の3分の1であるが、「刑期」とは、現実に刑を執行されるべき期間をいい、未決勾留の算入・通算がある場合(刑2、刑訴495)、刑の一部の執行免除によって刑期に算入すべき日が生じた場合(刑5)には、それらを宣告刑期から除いたものが刑期となる。たとえば、宣告刑が懲役10月、未決通算が15日、刑期起算日が2月1日の場合には、宣告刑期から未決通算を差し引き、現実に刑が執行されるべき期間として2月1日から11月15日までの9か月と15日間が求められ、これを3分して3か月と5日間が「刑期の3分の1」であり、2月1日から3か月と5日を経過した5月5日(これを実務上、応答日と呼んでいる。仮釈放、仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則8)を過ぎれば、刑期の3分の1を経過したことになる(算出方法について、昭44-7-22矯正局長・保護局長通達矯保1235号)。

(5)無期刑
無期の場合は、未決勾留通算の有無にかかわらず、刑の起算日から10年を経過していることが仮釈放の要件とされている(昭3-12-14法曹会決議)。